洗礼の恵み 主の洗礼(マルコ1・7~11)

 イエスが洗礼者ヨハネから洗礼を受ける場面を思いながら、自分が洗礼を受けた時のことや、洗礼を授けた時のことを思い出すのもよいでしょう。

 2004年の年末、一人のシスターから芸能プロダクションのプロデューサーをしている相馬一比古(かずひこ)さんに臨終洗礼をお願いされました。相馬さんは芸能界の仕事に長年携わり、無我夢中に働いてきましたが、喉頭がんを患い、荻窪の病院に入院していました。元気な時は、ピンクレディー、野口五郎、西城秀樹、和田アキコといった人材を育て、彼らの舞台裏で働いてきた人です。六十歳の働き盛りでしたが、過労も重なり、喉頭がんになってしまいました。

 臨終洗礼のために病院を訪れたのは、2005年1月3日のことです。病室は無菌室で、湿度が高く設定され、真冬とはいえ、病室の中はまるでジャングルのような暑さ。相馬さんの病状に合わせた部屋の温度管理だったのでしょう。汗かきの私には、汗びっしょりの洗礼式になってしまいました。病室には一人のシスター、相馬さんの奥様、その友人夫妻。相馬さんは喉からチューブを入れているため、話すことができませんでしたが、洗礼を受けていく時には、無垢で、子どものような純粋さが漂っていました。それまでは芸能界の仕事ということもあって、汚れた部分もあったのかもしれません。それをきれいに洗い落とすかのように、涙をボロボロと流し、まったく新しい人に生まれ変わるような顔でした。洗礼が終わった後、声を出すことはできないけれど、「ほんとうにありがとうございました」という気持ちがよく伝わってきました。洗礼名は「パウロ」。洗礼のすばらしさを痛切に感じた時でした。それから十日くらい経過した一月十四日に息を引き取りました。

 その数日後、通夜と葬儀が営まれ、ピンクレディーの二人や芸能界の方々が数多く参列していました。特にピンクレディーにとっては、その年の三月に復活コンサートを予定していただけに、悲しみもひとしおだったようです。パウロ相馬一比古さんの洗礼を通して、洗礼の恵みや復活の喜びを感じさせられました。