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『きこえなかったあの日』:ブラザーが選ぶ! おすすめ映画

 生まれつき耳が聞こえない映画監督今村彩子(いまむらあやこ)が、「東日本大震災」(2011年3月11)をきっかけに、「耳の聞こえない人たちが置かれている状況を知ってほしい」という思いでカメラを回し、日本で災害を受けた地域の耳が聞こえない人たちとの同伴のドキュメンタリー映画である。

 今村さんは、名古屋での仕事中に地震を知り、地震から後11日目に宮城県名取市在中で宮城県聴覚障害者協会会長である小泉正壽(しょうじゅ)さんを訪ねた。今村さんは、小泉さんに案内されろう夫婦である菊池藤吉、信子さんの所に案内される。彼らは、耳が聞こえないと言うことで、周りとのコミュニケーションが取れないばかりか、必要な情報も得ることができず、ストレスが溜まっていた。

 信子さんは、今村さんも耳が聞こえないと知り、堰を切ったように今までの不安や苦しみを手話で訴えかけた。避難所では、手話通訳ができる人も、耳が聞こえない人のための配慮も何もなく、係員が物品の配給がある、などのお知らせを伝えていても全く二人には、わからなかったのである。菊池さんたちは、地震当時近所の人が、「津波が来る」と知らせに来て、一緒に高台に避難して一命を取り留めたが、家は流されてしまい跡形もなくなる。菊池さん夫婦は、仮設住宅に移り信子さんの明るい性格と手が器用なことで、近隣の人とも付き合いだし、徐々に明るさを取り戻し、編み物やビーズ細工でいろいろなものを作り、周りの人に配るようになった。

 小泉さんは、今村さんを一人住まいの加藤えなおさんの所に連れて行く。彼は、以前の聾学校では手話が禁止されていたため、十分な教育も得られないため読み書きも厳しく、独特の手話のために手話通訳の岡崎さんを通してのコミュケーションとなった。彼は、以前は人と交わることを避けていたが、外に出ることで少しづつコミュケーションの楽しさを知り、今までずいぶん損をしていたことに気づく。それからの彼は、竹を切りソーメン流しをしてかせるの人を楽しませる、などをしながら皆んなとコミュケーションを取るようになってきた。

 2016年4月14日、熊本地震が起こり、今村さんは現地に向かう。そこでは、東日本大震災とは大きく違い、耳が聞こえない人のために「文字とイラスト」による情報提供やボランティアによる手話通訳者が避難所でサポートしていた。彼らは、耳が聞こえない人への情報だけはなく、不安を抱えている人の話し相手となっていた。

 2018年6月、西日本豪雨の時にも今村さんは、同じように現地に向かう。そこでは、各県から駆けつけた耳が聞こえない人たちが、被災した人たちの所に向かい被災した家の土砂をすくう作業をしていた。彼らは、「自分たちは、耳が聞こえないだけで、体は健康である。だから、被災した人たちのために何か役に立ちたくてきた」と。また、ある人は、「ボランティアに来たが、『耳が聞こえない』と知ると断れられたが、ここでは受け入れてくれたくることができた」と語っていた。

 このように、耳が聞こえない人たちは、自分が受けるだけでなく、積極的に社会の中に入ってきている。また、行政でも「手話言語条例」が成立している都道府県が増え、手話の啓発やテレビでの「手話通訳」「字幕」付きの放送も広がっている。

 この映画は、健常者もハンディを負っている人も皆んなが安全に、そして幸せに生きることができる、そんな社会を作る一つのきっかけとなればと、願いたくなるドキュメンタリーである。


『きこえなかったあの日』

2021年2月27日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開。全国一斉ネット配信実施。

■監督・撮影・編集 今村彩子

■編集協力:岡本和樹

■整音:澤田弘基

■音響効果:野田香純

■選曲:今井志のぶ

■イラスト:小笠原円 

2021年製作/116分/日本

配給:Studio AYA

配給協力:リガード

©2021 Studio AYA

公式サイト:http://studioaya-movie.com/anohi/


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