『ポネット』:ブラザーが選ぶ! おすすめ映画
愛くるしい瞳で観客をくぎ付けにした『ポネット』が23年の歳月を得て、4Kレストアの高精細デジタルリマスター版として劇場に帰ってくる。
4歳のポネット(ヴィクトワール・ティヴィルゾル)は、交通事故で母親を亡くし、彼女自身も左腕を骨折するが一命をとりとめる。父親(グザヴィエ・ボーヴヴォワ)は、ケガしたポネットを伯母(クレール・ヌブー)に預かってもらうために車で向かう。車中で父親は、無理な運転でポネットをケガさせ、自分も死んでしまった母親のことを批判するが、ポネットは「ママは、悪くないもん」とかばう。父親は、途中車を止め、ポネットを肩車して「ポネット、絶対に死んではいけない」と約束させ、「ママは死んだんだ。これからは、パパとうまくやれるか」と尋ねる。ポネットは「うまくやれる。」「ママは、魔法の鏡で飛んで行ったの」と母親の死を彼女なりに理解しているようである。
伯母の家につくと、もすでに遺体が棺の中に納められていた。いとこのデルフィーヌ(デルフィーヌ・シルツ)とマチアス(マチアス・ピューロー・カント)は、ポネットとの所に来て、彼らなりの子どもの目線で「母親の死」について語り始める。ポネットは、彼らの話を聞きながら「ママは、イエス様と上にあがるの」と答える。
翌朝いとこたちは、まだパジャマ姿のポネットのベッドの所にきて、「一緒に遊ぼう」と誘うのだが「ママは、イエス様の赤い屋根のお城に夜だけ住んでいるの」と言って大好きな人形ヨヨットと一緒にママが来るのを待ち続ける。伯母は、そんなポネットにイエス様が亡くなって墓に葬られたのに復活して弟子たちに会いに来たんだよ。ポネットのママもお祈りしたら会いに来るよ」と話すのだった。ポネットは、伯母の話を信じ、庭でママを待ち続けるのであった。そんなポネットの所にいとこたちは、遊びに誘うがまたしてもポネットは、「イエス様は、友のために生き返った。ママは、友以上だから、ママが来るまで待っている。」と言って彼らと遊ぶのを拒むのであった。デルフィスは、「死んだ人がよみがえるおまじないがあるの」と言って弟のマチアスに伝える。マチアスは、姉から聞いたおまじないの呪文「タリタ・クム」と大きな声で叫ぶ。いとこたちは、お互い死んだマネをして「タリタ・クム」と言い合いながら遊ぶのであった。
この「タリタ・クム」とは、聖書の中でイエス様が、亡くなった少女を蘇らせる奇跡を行った時に使った言葉で「少女よ、わたしはあなたに言う。起きなさい」(マルコ5・41)という意味である。ポネットは、そんないとこたちの遊びを眺めながら、ひたすらママが戻ってくるのを待つのであった。伯母は、自分が「祈っていればママが戻ってくる」と言ったことを信じて待っているポネットの所に行き、「ママを待っても戻ってこない。イエス様以外の人たちは戻ってこないの」と言って彼女を説得するのだが幼いポネットは、聞き入れることができない。ポネットは、誰もいない庭に出て、空に向かって「タリタ・クム」と叫ぶのであった。
この映画は、4歳の少女ポネットと周りの子どもたちを通して、母親の死の喪失体験に寄り添っている。ポネットは、母親の死を彼女なりに理解しようとしているが大人の目線での理解とは異なっている。ただ単に子どもたちに死を理解させる映画ではない、母親の死を通して生きていくという希望の映画である。ポネットの純粋で信仰に生きようとする姿は、観る者に感動を与えてくれるであろう。(P)
『ポネット』
2020年6月より、ユーロスペース他にて全国順次公開
■スタッフ&キャスト
監督:ジャック・ドワイヨン
製作:アラン・サルド
脚本:ジャック・ドワイヨン
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
音楽:フィリップ・サルド
出演:ヴィクトワール・ティヴィソル、マリー・トランティニャン、グザヴィエ・ボーヴォワ ほか
日本語字幕:寺尾次郎
1996年/97分/フランス/DCP/原題:Ponette
配給:アイ・ヴィー・シー
© 1996 StudioCanal – Les Films Alain Sarde – Rhône Alpes Cinéma
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