『パブリック 図書館の奇跡』:ブラザーが選ぶ! おすすめ映画
「公共図書館の3階にある1フロアーが突然占拠される!!」という事件が、アメリアオハイオ州シンシナティで起こった。例年にない大寒波の中、多くの路上生活者が凍死するニュースが流れる。この映画は、寒波の中苦境に立たされた路上生活者と一人の図書館員が起こした、あっと驚かされる奇跡のヒューマンドラマである。
実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)は、寒さの中暖を取るために図書館が開くのを待っている利用者に声をかけながら図書館の扉の中に入っていく。図書館の中には皮肉なことに寒さに強いはずの白熊のはく製が展示されていた。
いよいよ図書館がオープンするやいなや、利用者(路上生活者たち)は、図書館のトイレを使って洗面をし、身支度を始める。彼らの中の退役軍人のリーダー的なジャクソン(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)は、ちょうどトイレに入って来た、スチュアートと冗談を交わしながら近況を確認しあう。そんなとき、一人の警備員が入ってきて、図書館内で全裸の男性が歌っているというのである。彼らは、その男性の所に急ぐのだが、その男は、歌い終えるや否や床に倒れてしまい、救急車で搬送される。
ホッとするスチュアートであったが、図書館の館長アンダーソン(ジェフリー・ライト)に会議室に呼び出された。スチュアートは、「利用者の体臭がきついことを理由に退館を命じられたこと」を理由に訴えられたと高飛車な検察官デイヴィス(クリスチャン・スレイター)に告げられる。
一方、スチュアートの同僚マイラ(ジェナ・マローン)は、利用者に本の質問の他、初代大統領のカラー写真はあるか? 実物大の地球儀はあるか? などと質問され、それらの応対に大童である。彼女は、上司であるスチュアートに転属の願いを出していたが、のびのびにされいささか不満気味であった。
長い一日も終わり図書館の閉館のアナウンスが流れるなか、ジャクソンがスチュアートに近づき「今夜もシェルターはどこも満杯だ。市のお偉方はシェルター不足をわかっている。キリスト教徒を名乗りながら知らん顔だ『飢えた者に食を。貧者に衣服を。家なき者に屋根を』というのがイエスの教えだ。俺たちはここを占拠する。」と伝える。スチュアートが見回すとそこには、約70人の路上生活者がいるのであった。スチュアートは、戸惑いながらも彼らの願いを聞き入れ、フロアーの扉に書棚や机などを使ってバリケードを作り彼らに協力するのであった。
騒ぎを聞いて駆け付けた館長のアンダーソン、ベテラン刑事ラムステッド(アレックス・ボールドウィン)、そして運が悪いことにスチュアートを敵視し、次期市長選挙に出馬予定の検察官デイヴィスまで首を突っ込んできたのである。スチュアートは、「自分たちは、平和的なデモであること。ホームレスの避難所を用意すること」を説明するのだが、この騒ぎがマスコミに知られ、ますますひどくなってします。そして、警官隊が突入する、その時奇跡が起こったのであった。
私たちの周りには、いじめに会い苦しむ人、飢えに苦しむ人、さらに、自然災害や様々な風評被害で苦しむ人など多くの助けが必要な人たちがいます。私たちに彼らに何ができるかわかりませんが、ジャクソンの声は、私たち一人ひとりの心に叫び続けているような気がいたします。この映画を観て何か彼らの声に耳を傾ける一助となれば幸いです。(P)
『パブリック 図書館の奇跡』
2020年7月17日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
■製作・脚本・監督・主演:エミリオ・エステベス(『ボビー』『星の旅人たち』)
■出演:アレック・ボールドウィン(『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』)、テイラー・シリング(「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」)、クリスチャン・スレイター(『トゥルー・ロマンス』「Mr.Robot/ミスター・ロボット」)、ジェフリー・ライト(『007 カジノ・ロワイヤル』)、ジェナ・マローン(『ネオン・デーモン』)、マイケル・K・ウィリアムズ(『それでも夜は明ける』)、チェ“ライムフェスト”スミス
2018年/アメリカ/英語/119分/スコープ/5.1ch/原題:The Public/日本語字幕:髙内朝子
提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド
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公式サイト:longride.jp/public
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